研究開発調査の成果と概要
新規需要拡大に関するテーマ
アルコールを利用したバイオ技術による新甘味料等の研究開発(H11~H12

1研究成果の概要

1-1α-グルコシダーゼ生産菌のスクリーニング及び遺伝子クローニング

α-グルコシダーゼ生産菌の検索により、Aspergillus.kawachii (以下 A.Kawachiiという。)を選択した。 A.kawachii のα-グルコシダーゼの遺伝子クローニングを行い、遺伝子配列情報の解析を試みた結果、遺伝子配列の全長(2964bp)を明らかにした。

本遺伝子は、987アミノ酸からなるポリペプチドをコードしていた。推定アミノ酸配列を他種糸状菌のグルコシダーゼと比較し、A.niger A.oryzaeのそれと、夫々95%、77%の相同性を示した。

1-2酵素精製・固定化技術

A.  Kawachiiの酵素は、菌体結合性であるため、超音波処理、酵素処理、界面活性剤処理により可溶化した。これを精製し、この酵素が至適温度60~70℃、温度安定性40℃、至適pH は、5.0でエタノールに対する安定性は極めて高いことが分かった。分子量は、約15万と推定された。

また、A.Kawachiiの菌体を、レーヨン不織布、シルク不織布等に固定化し、エチル-α-グルコシド(以下α-EGという)生産について検討し、ポリエステル不織布を選択した。

1-3化学合成法の検討

硫酸触媒、イオン交換樹脂触媒を用いたα-EGの合成法の検討から反応時間、反応率等で硫酸触媒が有利であることが分かった。化学合成法ではα体、β体が生成し、これらの分離が極めて重要であることが分かった。製造プロセスでの工業化コスト試算では、酵素合成法に比べ高価なものとなった。

1-4α-EG生産プロセス運転研究

A.Kawachiiを用いた各種の実験、検討により得られた成果を用いてベンチスケールプラントの設計、製作した。運転研究では、閉鎖系バッチ式、バッチ式、連続式の比較検討し、殆ど差が無いことが分かった。運転研究では、閉鎖系バッチ式、バッチ式、連続式飲む比較検討し、殆ど差が無いことがわかった。運転研究の結果は、改善すべき点はあるが、反応液中のα-EG収率2023%(α-EG量は、1517g/l)で、精製工程を経て70%のα-EGを得ることができた。この場合の試算コストでは、約2,500円/kgであった。

1-5ベンチスケールプラントの機能の検討

 ベンチスケールプラントで得られたα-EGの機能を検討し、味覚改善等に効果があることがわかった。

1-6安全性評価

検索菌体からの新規な酵素を利用することから、ベンチスケールプラントで製造されたα-EGの安全性をラットにおける急性経口毒性試験、細菌を用いる復帰突然変異試験、ほ乳類の培養細胞を用いる染色体異常試験等により確認した結果、問題はなかった。

1-7今後の課題

本研究開発で得られた成果をもとに、検索等による高性能菌株の取得、プロセスの改善、精製方法の改善、更には特異的機能の確認等により一層のコスト低下、利用面の進展が図ることができれば実用化は近いものと思われる。