アルコールによる手荒れの発生メカ二ズムは、アルコールの皮膚への浸透作用によって角層内の脂質成分やアミノ酸成分などが溶出し、角層の水分保持機能が低下するために引き起こされることがわかった。特にアルコール濃度が47%以上では手荒れが著しく増加する傾向が見られた。
アルコールによる手荒れの改善に効果的な手荒れ軽減物質のスクリーニングの結果、水溶性保湿剤であるグリセリンと油溶性保湿剤である乳酸ラウリルの併用系が手荒れ軽減効果と使用感が優れ、かつ耐水性と耐摩擦性に優れることがわかった。
処方検討の結果、手荒れ軽減物質の配合濃度はグリセリン2w%/乳酸ラウリル0.5w%配合系が手荒れ軽減効果と使用感に優れ、アルコール濃度は乳酸ラウリルの溶解性と手荒れを考慮して55v%が最適と判断された。
長期保存安定性については、薬事法の基準となる40℃、6ヶ月間の長期保存安定性において問題がないことを確認した。なお、耐光性については容器形態を工夫することで改善することができると判断された。
手荒れ軽減物質を配合したアルコール静菌剤の手荒れ軽減効果の有効性と使用感について、実際に医療従事者を対象に使用調査を実施した結果、手荒れ軽減物質未配合のアルコール静菌剤や市販アルコール製剤Aと比較して手荒れ軽減効果と使用感に優れることが確認できた。
アルコールと併用した場合、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌及び緑膿菌に対し殺菌・静菌効果に優れていた消毒薬は、グルコン酸クロルヘキシジンと塩酸アルキルジアミノエチルグリシンであった。
また、0.2W%のグルコン酸クロルヘキシジンまたは塩酸アルキルジアミノエチルグリシンと55V%のア ルコール(手荒れ軽減剤含有)併用剤は、ヒトにおける実験でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌及び緑膿菌 に対し市販のアルコール製剤と同等な殺菌効果があることが明らかとなった。さらに、殺菌効果の持続性 も市販製剤と同様、2時間以上であることがわかった。
手荒れ軽減物質を添加したアルコール静菌剤及びその使用材料について、使用の際の短時間接触で問題と なるような毒性のうち基本的なもの、即ち、急性毒性、皮膚刺激性、眼粘膜刺激性、皮膚感作性、光毒性及び変異原生について、微生物や動物を用いた安全性試験の結果、アルコールによると思われる軽度の眼 粘膜刺激性と皮膚刺激性が認められたが問題となるような毒性ではなかった。反対に、アルコール濃度を低くしたことで眼粘膜刺激性は市販製剤より2ランク弱い結果となった。
製剤のプロトタイプの配合をエタノール10%、リパーゼ0.1%、ホウ酸2%、緑茶エキス2%、タイワンハンノ木(落葉高木)の葉から熱水抽出液85.9%と決定した。プロトタイプ製剤の有効性の評価、経時的安定性の確認を行い、有効性については、臭気判定士による。
臭気強度及び快・不快度テストで明らかな消臭効果が確認できた。また、イヌ及びネコを飼育している家庭でのテストで、参加した家庭の50%以上で消臭効果が認められた。この他ペットショップにおいて、 イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスターなどを対象にしたテストでも効果が認められた。
経時安定性については、12ヶ月保存試料のリパーゼ安定性は、4℃では50%、室温では20%の残存活性 を示し、低級脂肪酸のエステル化能も確認された。
日本の北から南までの針葉樹林及び広葉樹林の大気中から一般的に検出されるテルペン類を選び、脳波の随伴陰性変動及びα波のゆらぎスペクトルの傾き係数の変化を測定し、鎮静的及び覚醒的でかつ快適性への傾向を示す化合物を抽出した。
抽出された化合物について香りのベースの処方を検討し、8種類の処方を作成した。
この処方を用いて製剤モデルを作成し、気分評価を行った結果、リフレッシュ感やリラックス感の高い製剤B及び製剤Eを選択した。
製剤B及び製剤Eについて、随伴陰性変動及びα波のゆらぎ傾き係数を測定した結果、香りが無い場合に比べて製剤Eが、随伴陰性変動で15%以上の減少、α-波ゆらぎが20%以上の増加となり、目標レベルをクリアした。
トラッキングテストによる疲労負荷試験でも、エラーの復帰時間やテスト後の気分評価などで、香り有りの場合に明らかな差を確認できた。
市場モニターによる効果試験でも、製剤Bにリフレッシュ感が、製剤Eにリラックス感が観察された。
使用時の安全性について、動物を用いた試験を行い、安全性を確認した。
ラットを用いた経口急性毒性試験での最小致死量は、2ml/kg以上であり、ウサギを用いた皮膚一次刺激性試験での刺激指数は、香料ベースで3.42となり、弱い刺激物にランクさ れたが、モルモットを用いて製剤レベルでの刺激指数を検査した結果、刺激指数は0で、 全く安全でることがわかった。皮膚感作性試験では、感作性無しと判断され、安全な製剤であることが確認された。